「業績が落ち込んできたので、
もう1つの事業の柱として、公共工事を取れるようにしたい。」
大阪市F社様からのご相談
元請け業者の経営方針で、違う分野へ進出することになったことで、元請けからの仕事が激減し、業績が落ち込んできた。
これまでの元請け1本に頼るのではなく、自分たちも元請けとして仕事を取れるように、公共工事を取っていきたい。そのためには「ケイシン」というものがいると聞いたが、どうしたらいいのか?
公共工事入札制度の全体像
公共工事の入札制度は、建設業許可・経営事項審査(経営状況および経営規模等評価申請)・入札参加資格申請・入札・契約というふうに、いくつもの制度が組み合わさってできており、非常に複雑な手続きとなっています。
県や市の仕事(公共工事)を受注するためには
- 県や市の入札に参加しなければなりません。
↓ - 入札に参加するためには、その自治体での入札に参加できる資格(入札参加資格)が必要です。
「業者登録」とか「指名願い」なんて言われたりします。
↓ - 入札参加資格を取るには、入札参加資格審査申請という手続きをしないといけません。
↓ - 入札参加資格審査申請には、「総合評定值通知書」が必要です。
↓ - 「総合評定值通知書」を入手するためには、経審(経営事項審査申請)を受けることが必要です。
↓ - 経審を受けるためには、建設業許可を取って、決算変更届を済ませておくことが必要です。
このように、これだけの段取りを踏んでいかなければならず、これだけでもうんざりするような事務手続きの山ですが、
それなりのメリットは十分にあります。
公共工事を受注するメリット
入札参加資格を取って公共工事を受注すると、以下のようなメリットがあります。
メリット1:元請業者となることができる
当然のことではありますが、役所が施主なので、受注すると「元請」業者として工事を行なうことになります。自治体や個別の案件によっては、過去の元請工事の実績を問われることもありますが、元請としての実績がなかったとしても入札に参加できる案件が意外とあるので、「下請工事専業から抜け出したい」とか「もう1つの売上の柱をつくりたい」という場合には、大きなメリットとなります。
協力業者(=下請)として現場に入るのでは、金額面など、どうしても元請業者の指示に従わないと、次の仕事のことで何かと不自由が生じてしまいます。けっきょく、泣きをみるのは自分たちだけで、いつまでたっても利益を出せないままになってしまう、なんていう話ばかりを耳にします。
その点、元請業者であれば、段取りや現場管理などをきちんと工夫していくことで、より多くの利益を確保できるようになります。
メリット2:信用が得られる
公共工事を請け負っていくようになると、対外的な信用が上がります。
国や地方自治体から工事を受注していること自体が地域や取引先に認識されることで信用につながり、新たな取引先を獲得できるなどの営業活動にもプラスになります。
また、それまでの下請工事とは別に、もう一本の売上の柱を持つことにもなるので、金融機関への信用も良くなって融資の際も有利になります。
メリット3:自社に適した工事案件を狙える
元請けとの取引だけでは、なかなか自社の希望するとおりの仕事をもらうことが難しいですが、公共工事の場合、自ら自社に適した工事案件を狙っていくことができます。
公共工事の発注者は国(中央省庁)や独立行政法人(大学)など多岐にわたっており、案件もけっこう細かく分類されているので、自社の得意なところをピンポイントで狙っていくことも可能です。
メリット4:工事代金の回収が確実で、資金繰りも良くなる
民間の取引だと、代金の回収リスクがもっとも怖いところです。また、材料代や外注費も基本的に先出しで、工事完成までの資金繰りに四苦八苦されていて、建設業のみなさんは本当に大変な思いをされていらっしゃいます。
その点、役所の案件だと間違いなく代金を回収できます。工事を完了して引渡しを行なえば、絶対に入金されます。
メリット5:資金繰りの面でも助かる
公共工事では、契約締結後、着工前に請負金額の一部を前金としてもらうことができます(小規模なものは除く)。毎回、手許資金を取り崩して材料費や外注費の支払いしていることを考えれば、これはとても大きなメリットだと言えるでしょう。
1 経営事項審査
「ケイシン(経審)」とは何ですか?
「ケイシン(経審)」とは、「経営事項審査」のことです。
経営事項審査とは、公共工事への入札参加を希望する建設業者が、審査基準日(通常は決算日)現在の自社の経営状況や経営規模などについて、客観的な評価を受けるための審査のことです。経営事項審査は、一般に「経審(ケイシン)」(以下、「経審」という)と呼ばれています。経審を受けた建設業者は、最終的に「総合評定值通知書」を取得します。
公共工事の入札に参加する建設業者は、公共工事の発注者である省庁・地方公共団体などからケイシン(経審)の結果通知書(「総合評定値通知書」といいます。)の提出を求められるため、必ず、このケイシン(経審)を受けて総合評定値通知書を取得しなければなりません。
そして、入札を希望ずる官公庁ごとの入札参加資格を得るための資格審査を申請し、入札参加資格を得ることで初めて公共工事の入札に参加できるようになります。
公共工事の発注者である官公庁は、この総合評定値通知書に記載される評点(=総合評定値)を基準にして、建設業者のランク付けを行います。ランクに応じて入札に参加できる公共工事の発注予定価格の範囲が決まります。
この経審を受審して交付される通知書「総合評定値通知書」には、有効期限があるので、公共工事を受注しようとする建設業者は、総合評定値通知書の有効期間が切れないように、毎年の決算以降の各種手続きを確実に行うことが必要です。
経審の手続き
経審は、大きく2段階の手続きに分かれます。
まず第1段階として、「経営状況分析申請」というものがあります。これは、建設業者の決算書に基づいて経営状況を評価するものです。
経営状況分析申請では、建設業者が提出した決算書から一定の経営指標の数値を算出します。次に、算出された数値に一定の算式を当てはめて評点を出します。経営指標が良い数値を示すほど評点が高くなります。最終的に、経営状況の評点が掲載された「経営状況分析結果通知書」が取得できます。
次に第2段階として、「経営規模等評価申請」というものがあります。建設業者の経営規模や技術力、社会性などの評価するものです。一般的に、この第2段階の「経営規模等評価申請」のことを「ケイシン」といいます。
経営規模等評価申請では、売上高が大きくて技術者の数が多いほど高い点数が与えられるようになっていますが、ほかにも、営業年数、利益額、退職金制度など様々な面から建設業者を客観的に評価するようになっています。
経営規模等評価申請する際、第1段階での「経営状況分析結果通知書」が提出書類になるので、経営の規模と経営状況の両面から評定値が算出されることになります。
経審とは何を審査しているものなのか
ひとくちに「経審」といっても、一体誰がナニを審査するのでしょうか?
経審は、公共工事を受注するための準備みたいなものだとイメージしていただければOKです。
建設工事だけ、そういう制度があるのは、次のような理由があるからです。
・官公庁は、数多く存在する建設業者の規模や業種に見合った工事を発注する必要があるため、業種ごとに客観的な評価をする必要があるから。
・公共工事は税金を原資としているので、経営状態の悪い建設業者が起こしがちな「工事途中の倒産」という事態にはできないから事前のチェックが必要だから。
・公共の工事である以上、技術力や経験の不足による施工不良・不能は絶対に許されないから。
工事を発注する側の役所にとって、経審は建設業者を客観的に評価する基準となるものなのです。このため、経審では業種別の完成工事高をはじめとして、技術職員の数や経営状況・会計処理の信用度合いから営業年数にいたるまで、様々な項目が総合的に審査されます。
経審の有効期間は
ケイシンの有効期限、正確にいうと「総合評定値通知書」の有効期限は、決算日から1年7カ月です。
有効期間は1年とするのが自然ですが、この7ヵ月は、決算日から株主総会、確定申告、決算変更届、経審申請書の記載などの社内作業期間を4ヵ月とみなし、経営状況分析受付け日から経審の結果通知書発送までの標準処理期間の3ヵ月を合計した期間です。
けっきょくのところ、総合評定通知書を受取った日から、ほぼ1年間ということになるわけです。
確定申告や経営状況分析の申請が遅れた場合には、結果通知書の到着も遅れますが、未着期間中に公共工事などを入札で落札しても、発注者と契約を締結できない事態も生じます。申請の提出期限を遵守することが重要です。
2 建設業許可と決算変更届
役所の工事を受注するためには経審を受けなければなりませんが、その経審を受ける前提条件として、建設業許可は必須です。
また、建設業許可を受けた者は、毎年決算日から4か月以内に「決算変更届」という届出が必要です。決算変更届は、終了した事業年度の財務諸表や工事経歴書を許可行政庁に対して届け出るものです。
決算変更届は、建設業者の営業実態の把握と監督のもとになるものとして機能しています。この決算変更届の提出を怠ると5年おきの許可の更新が受け付けてもらえないばかりか、実際は営業していても、営業実態がないとみなされ許可取消処分の対象とされてしまいます(建設業法上、1年以上の営業休止は取消事由となっているからです)。
3 入札参加資格申請の概要
経審を受けて総合評定値通知書を入手できると入札参加を希望する官公庁に対して「入札参加資格申請」をおこないます。
入札参加資格の申請は、受付期間が決まっていて、役所ごとにそれぞれ決められています。多くの官公庁ではだいたい11月〜2月の間で設定されています。なかには数年に一度しか受け付けないなんて役所もあるので、注意が必要です。
4 電子入札の登録
最近はどこの役所も、入札は電子(オンライン)で入札するようになっているので、電子入札(オンラインでの手続き)ができる環境を整えなければなりません。
入札資格の申請と並行して、電子認証に必要なICカードを、電子認証機関に申請して入手することになります。
電子認証機関はいくつかあるので、任意の業者を選んで申し込みます。申し込み後、だいたい2週間くらいで電子認証機関からICカードが届きます。そのICカードを使って、市の電子入札のウェブサイトに接続して電子入札の登録を済ませましょう。
5 入札参加の指名と電子入札への参加
入札参加資格申請と電子入札の登録を終えたとしても、やはり営業活動は必要です。県や市の工事発注を担当する各部署を何度も訪問して名刺を配るなどの営業活動もまめにした方がよさそうです。また、日ごろから役所のHPなどから入札案件が出ているかチェックすることも必要です。そうこうしていると、メールで入札案件のお知らせなどが入ったりします。その案件の工事の設計図書をダウンロードして、積算します。
入札当日までに積算を終えて入札額を決定するなど必要事項を入力し、送信したら、あとは待つだけ、といった感じです。
建設業に詳しい行政書士に依頼して、公共工事に参入していきたい!
『民間工事だけではなく、県や市の仕事も受注して売上の柱となるものをもう一つ増やしたい』と思っていらっしゃる建設業者さんのご相談もたくさん受けます。
現在依頼している行政書士はあまり経審に詳しくないらしく「ウチではできない」と言われた、ということでご相談をいただきます。
入札参加できるようになるまで
① 決算変更届などの届出
経審を受審するためには、変更届や決算変更届が適切に提出されていることが必要です。
ここでよくあるのが、決算変更届が出されていたとしても、それが消費税込みで作成されている場合です。経審を受けるためには「税抜き」で作成されたものでなくてはなりません。
その点の訂正などの対応も致します。
② 『工事業種』についての打合せ
これまでの実績などもお聞きしながら、入札によって受注していきたい工事業種は何かについて確認を行います。
・売上高が0など、工事実績のない業種については、経審を受審しても入札に参加できない場合がある
・入札参加資格は、『第一希望と第二希望の2業種まで』など制限がある
・経審を受ける際、業種の数によって手数料が高くなる
など、経審を受ける際の注意事項などを踏まえたうえで、どのように審査を受けていくか方針を決めていきます。
③ どの役所について入札資格を取るのか、どの規模の工事を受注したいのか
同じ業者でも地元業者の方が優遇されることがあったり、入札参加資格の受付期間が決まっていることからタイミングによっては次年度の資格申請にならざるをえないことなど、検討ていきます。
分からないことがあれば、とりあえず聞いてみるのがいちばんです。
「書類とか手続きとか、とにかく苦手。もう、なんのことやら、さっぱり分からない。」
そのような方でも、ご安心下さい。
ゼロから、何度でも、ご説明させていただきます。
ご用意をお願いするものがある場合でも、「たぶん、この中にあると思う」みたいな感じでバサッと渡して頂くだけで大丈夫!
あとは当職の方で必要なものを探すなどして対応致します。
当事務所では、お客様のお話をじっくりとお聞きして、
お客様にとってのベストな解決策をご提案いたします!
建設業許可のことでお困りのときは、
どうぞお気軽にお電話ください。